ESDとは
ESD
ESDとは
ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。
今、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。例えば、国際機関である気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2019年9月に地球の気候変動は南極の氷を溶かして海面上昇を招き、海の生態系に影響を及ぼす。気温上昇によって永久凍土が溶ければ温室効果ガスが放出される悪循環になるという衝撃的な特別報告書を発表しています。
このように地球規模の課題は年々深刻化していく厳しい世界に生きている子供たちに対して、知識を一方的に教え込むだけの教育を続けていても課題解決に必要な資質・能力を十分に育成することはできません。子供たちにどのような資質・能力が求められているのか、その育成に、どのような教育の在り方が必要なのかを共に考え、実践を通して共有していく教育改革の営みそのものがESD の原点です。
すなわち、ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組むことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。
つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育です。
(出典:『SDGsとESD実践ガイドブック』)
ESDで目指すこと
ESDの目標
- 全ての人が質の高い教育の恩恵を享受すること
- 持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれること
- 環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような価値観と行動の変革をもたらすこと
育みたい力
- 持続可能な開発に関する価値観(人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、機会均等、環境の尊重等)
- 体系的な思考力(問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方
- 代替案の思考力(批判力 ○データや情報の分析能力
- コミュニケーション能力 ○リーダーシップの向上
学び方・教え方
- 「関心の喚起 → 理解の深化 → 参加する態度や問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促すという一連の流れの中に位置付けること
- 単に知識の伝達にとどまらず、体験、体感を重視して、探求や実践を重視する参加型アプローチをとること
- 活動の場で学習者の自発的な行動を上手に引き出すこと
(出典:ESD国内実施計画)
ESDの歩み
「国連持続可能な開発のための教育の10年」
2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブルグサミット)」で当時の小泉総理大臣が持続可能な開発における人材育成の重要性を強調し、「持続可能な開発のための教育の10年」を提唱しました。これを受け、同年、国連第57回総会決議により、2005年から2014年までの10年を「国連ESDの10年(DESD)」とし、ユネスコが主導機関に指名されました。
「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム」
2013年11月、第37回ユネスコ総会において、「国連ESDの10年」(2005~2014年)の後継プログラムとして「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」(2015~2019年)採択され、2014年第69回国連総会で承認されました。
持続可能な開発は政治的な合意、金銭的誘因、又は技術的解決策だけでは達成できません。持続可能な開発のためには我々の思考と行動の変革が必要であり、教育はこの変革を実現する重要な役割を担っています。そのため、様々な行動によってESDの可能性を最大限に引き出し、万人に対する持続可能な開発の学習の機会を増やすことが必要です。「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム」は、この行動を生み出すための枠組みを示すものです。
(出典:『SDGsとESD実践ガイドブック』)
2030アジェンダとSDGs
2015年9月の国連総会では、世界の諸課題を解決に導き、より良い未来を目指すための道筋を示した、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が国際連合参加国・地域の全会一致で採択され、そのアジェンダ中に「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げられました。SDGsは、2016 年から2030 年までの間に発展途上国から先進国まですべての国がめざす世界共通の目標で、環境・社会・経済の3つの側面のバランスが取れた持続可能な世界を実現するための17 のゴール(目標)とそれぞれのゴールの下にある、より具体的な169項目のターゲット(達成基準)で構成されています。
SDGsとESDの関係
「教育」はSDGsの目標4に位置付けられ、さらにターゲット4.7に、「持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能の習得に向けて取り組むこと」すなわち、ESDの推進が位置付けられています。また、日本政府の『SDGs実施指針』には、優先課題のひとつとして「国内外におけるSDGsの達成を担う人材育成の強化」があげられています。
(出典:『SDGsとESD実践ガイドブック』)
2019年2月19日、第74回国連総会本会議においてESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)の後継枠組みである「ESD for 2030」が採択されました。「ESD が質の高い教育に関する SDG に必要不可欠な要素であり、その他の全ての SDGs の成功への鍵として、ESDはSDGsの達成の不可欠な実施手段である」と決議に明記されました。
(出典:文部科学省ESDポータルサイト)
参考文献
- 日本ユネスコ国内委員会 ( 文科省) ウェブサイト
- 『ESD(持続可能な開発のための教育)推進の手引』(改訂版)
- ESD 持続可能な開発のための教育 ウェブサイト
- 我が国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画(ESD 国内実施計画)
- 認定 NPO 法人「持続可能な開発のための教育推進会議 (ESD-J) 」ウェブサイト
- 北陸ESD 推進コンソーシアム ウェブサイト ( 資料検索ガイド)
- 大学コンソーシアム石川地球環境基金助成金プロジェクト ウェブサイト
- 『教員のためのESD ガイドブック』北陸ESD 推進コンソーシアム (2017 年) 発刊
- 『SDGsとESD実践ガイドブック』石川県ユネスコ協会・北陸ESD 推進コンソーシアム(2020年) 発刊
ユネスコスクールとは
ユネスコスクールは、1953年、ASPnet(Associated Schools Project Network)として、ユネスコ憲章に示された理念を学校現場で実践するため、国際理解教育の実験的な試みを比較研究し、その調整をはかる共同体として発足しました。
世界182か国で11,500 校以上がASPnetに加盟して活動しています。日本国内では、2018年10月現在、1,116校の幼稚園、小学校・中学校・高等学校及び教員養成系大学がこのネットワークに参加しています。
日本では、ASPnetへの加盟が承認された学校を、ユネスコスクールと呼んでいます。ユネスコスクールは、そのグローバルなネットワークを活用し、世界中の学校と交流し、生徒間・教師間で情報や体験を分かち合い 、地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指しています。
文部科学省および日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールを持続可能な開発のための教育(ESD:Education for Sustainable Development)の推進拠点と位置づけ、加盟校増加に取り組んでいます
(出典:ユネスコスクール公式ホームページ)
ユネスコスクールの理念
- ユネスコの理念を具体的な行動に結びつけるため、ユネスコはASPnetを1953年に設立しました。このネットワークに加盟するユネスコスクールは以下の活動を実施します。
- 質の高い教育を実践し、普及させる
- 人材養成、平和、正義を追求する
- 世界中の青少年の教育ニーズに対応する
- ユネスコスクールは「平和の案内役」であり、効果的な変化をもたらす媒体です。
(出典:ユネスコスクール公式ホームページ)
ユネスコスクールの活動目的
- ユネスコスクール・プロジェクト・ネットワークの活用による世界中の学校との交流を通じ、情報や体験を分かち合うこと
- 地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指すこと
(出典:ユネスコスクール公式ホームページ)
ユネスコスクールが目指す21世紀の学習の4本の柱
- 知ることを学ぶ:複雑な世界の理解に備え、将来の学習のための基礎を作る
- 試すことを学ぶ:グローバル化する経済や社会において機能するためのスキルを身につける
- 人間として生きることを学ぶ:個人がそれぞれの知的・社会的な可能性を活かせる、バランスの取れた情緒と身体を持つ人間を育成する
- 共に生きることを学ぶ:個人や社会が平和的に共存できる社会のあらゆるレベルでの人権・民主主義・異文化理解と尊重・平和と人間関係に触れる
(出典:ユネスコスクール公式ホームページ)
ユネスコスクールの参加のメリット
- ユネスコ本部より認定証が送られます。
- 世界のユネスコスクールの活動情報の提供
- 世界のユネスコスクールと交流する機会の増加
- 米国、韓国、中国等海外との教員交流
- 世界の教育事情、国連機関の活動の把握
- ESDのための教材、情報の提供
- ユネスコスクールHPを通じた情報交換
- ワークショップ、研修会への参加
- 国内の関係機関との連携強化
ユネスコスクールガイドライン
- 日本ユネスコ国内委員会では、教育小委員会及びその下に設置したユネスコスクールワーキンググループにおいて検討を進め、以下のとおり、ユネスコスクールガイドラインをまとめています。(平成24年9月28日)
〈ユネスコスクールガイドライン〉
ユネスコスクールとして大切なこと
ユネスコスクールの活動には、次のようなことが大切ですので、各学校におかれては、これらの点を念頭において活動いただくことを期待しております。
- 国内外のユネスコスクール相互間のネットワークを介して、互いに交流相手の良さを認め合い、学び合うこと。
- 地域の社会教育機関、NPO等との連携などを通じて、開かれたネットワークを築くよう努めること。
- 校内外における各種研修の充実・活用を図るなど、ユネスコスクールの活動を通じて広く学校外にも働きかけ、我々人類社会が持続的に発展するよう心がけること。
- 学校経営方針等にユネスコスクールの活動に取り組むことを明確に示し、学校全体で組織的かつ継続的にユネスコスクールの活動に取り組みやすくすること。
- ユネスコスクールの活動を自らの学校評価の項目に盛り込み、活動の質の向上に努力すること。
- 必要に応じ、ASPUnivNet 加盟大学をはじめとする高等教育機関の支援や協力を得ながら、ユネスコスクールの活動の充実に努めること。
持続可能な開発のための教育(ESD)推進拠点として大切なこと
ユネスコスクールがESD推進拠点として発展していくには、次のようなことが大切ですので、各学校におかれては、これらの点を念頭において活動いただくことを期待しております。
- ESDを通じて育てたい資質や能力を明確にし、自分で、あるいは協働して、問題を見出し解決を図っていく学習の過程を重視した教育課程を編成するよう努めること。
- 総合的な学習の時間を中心とした教科横断的な指導計画を立てるなど、指導内容を適切に定め、さらに、指導方法の工夫改善に努めること。
- ESDの推進拠点として、研究・実践に取り組み、その成果を積極的に発信することを通じて、ESDの理念の普及に努めること。
(出典:日本ユネスコ国内委員会)